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困ったときは

5分で分かる:室外機浸水後の点検チェックリスト

結論:室外機が浸水・冠水した疑いがある場合、通電しないことが最重要です。誤った復旧は通電火災感電基板破損軸受損傷を招きます。本記事では、工場・事務所・店舗などの業務用エアコンを対象に、初動→復旧判断→再発防止までを実務視点で整理しました。

目次

1. 浸水時のNG行動(絶対にやらない)

  • 自己判断で通電・試運転をしない(漏電・通電火災の恐れ)。
  • ブレーカーを無理に上げない(漏電遮断器が落ちている=危険のサイン)。
  • 濡れた端子箱や配線に触れない(感電の危険)。
  • 泥が残る状態でファンを回さない(羽根割れ・軸受損傷・熱交換器損傷)。
  • 薬剤・高圧洗浄の乱用(基板やセンサーに二次被害)。

2. 初動対応:安全確認と記録

目的:二次災害を防ぎ、迅速な専門点検につなげる。

  1. 人の安全確保:感電・転倒の恐れがあるため、濡れた周辺に立ち入らない。必要なら立入禁止表示。
  2. 電源遮断:室外機・関連機器の分電盤ブレーカーをOFF。パネルに復旧日時をメモ。
  3. 状況の記録:スマホで機器全景/基礎/端子箱内部/配管接続/ドレン経路/周辺水位の痕を撮影。保険対応や原因分析に有用。
  4. 排水・泥の一次除去:安全を確保したうえで周辺の水・泥だけを軽く除去(機器内部は触れない)。
  5. 専門業者に連絡:写真と型式、台数、浸水高さ、停電有無を共有。

3. 復旧の判断フロー(通電前チェック)

業務用エアコンの室外機は制御基板・ファンモーター・コンプレッサ・電装箱など水に弱い部位が多く、乾燥後も腐食や短絡が残ります。以下は一般的な点検項目(抜粋)です。

  1. 目視点検:泥線(浸水高さ)/基礎沈下/架台・アンカー緩み/筐体の歪み。
  2. 電装系:端子箱内の水濡れ痕・腐食・配線被覆の擦れ。絶縁抵抗の測定(規定値未満は通電不可)。
  3. 回転体:ファン羽根の泥・変形、回転時の干渉の恐れ。ベアリング異音の有無。
  4. 熱交換器:フィンの詰まり・泥付着・白錆。無理な水圧洗浄は×。
  5. 冷媒回路:配管の曲げ・ひねり・座屈、オイル漏れ痕。圧力確認はプロの領域。
  6. ドレン・配管周り:勾配・詰まり・逆止弁の有無。屋上ドレン詰まりは再冠水の原因。

すべての安全条件が満たされた場合に限り、短時間の段階的試運転(無負荷→部分負荷→定格)で電流値・振動・吹出温度・排水を確認。異常があれば即停止します。

4. よくある故障・リスクと兆候

  • 通電火災・漏電:端子箱や基板の湿気・泥が原因。兆候=焦げ臭・ブレーカー遮断・異常発熱。
  • 基板・センサー不良:一見乾いても腐食が進行。兆候=不規則なエラー停止、リセットで一時復帰。
  • ファン軸受損傷:砂泥混入→異音・振動増。兆候=回転時の「ゴー」「ゴロゴロ」。
  • 熱交換器目詰まり:性能低下・高圧保護。兆候=冷え/暖まり不足、圧力異常。
  • 配管損傷・冷媒漏れ:転倒・基礎沈下で発生。兆候=油染み、霜付き、運転音の変化。

5. 事例で学ぶ:復旧と再発防止のポイント

事例A(事務所屋上):排水口の落ち葉詰まりで屋上が内水氾濫。室外機が20cm浸水し停止。
対応=電源遮断→専門点検→電装乾燥・絶縁回復後に段階試運転で復旧。
再発防止=屋上ドレン清掃の定期化+高置架台化

事例B(工場通路脇):地盤が低く豪雨で冠水。ファン軸受が砂噛みし異音。
対応=ユニット交換。
再発防止=設置場所の変更(かさ上げ)+排水路整備

6. 再発防止の恒久対策(設計・施工・運用)

  • 高置架台化:想定水位+余裕を見てかさ上げ。点検時に清掃しやすい高さも考慮。
  • 設置場所の見直し:低地・側溝脇・屋上ドレン直下を避け、可能なら建物中央寄りへ。
  • 排水計画の強化:側溝の堆積物除去、屋上ドレンの定期清掃、逆止弁で風雨時の逆流を抑制。
  • 防水・防錆:端子箱のパッキン劣化交換、ケーブルグランドの密閉、金具の防錆塗装。
  • 電気保護:漏電遮断器の定期試験、雷サージ(SPD)対策。
  • 運用ルール:台風・線状降水帯の予報発表時は停止→ブレーカーOFFまで含めた手順書を整備。

7. まとめ/チェックリスト(抜粋)

ポイントは「通電しない・安全確認・原因を潰す」。

  • 安全確保 → ブレーカーOFF → 状況記録(写真)。
  • 通電前点検:電装・回転体・冷媒回路・熱交換器・ドレン。
  • 段階的試運転:電流・振動・温度・排水の順で確認。
  • 恒久対策:高置架台/設置再配置/排水強化/防水・防錆/SPD。

チェック欄(コピー用):
□ ブレーカーOFF □ 写真撮影 □ 浸水高さ記録 □ 端子箱乾燥 □ 絶縁測定 □ 試運転記録 □ 再発防止策の実施