【台風養生】“運転中カバーはNG”って本当?屋上機の養生 正解・不正解
結論:台風対策の肝は「固定」「排水」「通電管理」です。特に屋上に設置された業務用エアコン(パッケージ/ビル用マルチ〈VRF〉の室外機)は、風圧・飛来物・浸水・停電復帰時の通電リスクが重なります。本記事では、台風前→接近中→通過後→恒久対策の順に、現場でそのまま使える手順とチェックリストをまとめました。
目次
- 台風前(72〜24時間前)にやるべき準備
- 接近中(24〜0時間)の安全運用ルール
- 通過後(0〜48時間)の復旧フロー
- 恒久対策:設計・施工で台風に強い設備へ
- よくある質問(FAQ)
- まとめ/チェックリスト(抜粋)
台風前(72〜24時間前)にやるべき準備
狙い:転倒・浸水・誤運転を未然に防ぐ。
1) 固定・支持の点検
- アンカー・座金・ボルトの緩み:目視+スパナで軽く当て確認。欠品・錆・割れは即是正。
- 架台・振れ止め金具・ワイヤ:腐食やひび、たわみの有無。屋上の縁や立上り近傍の機器は特に要注意。
- 防振ゴム/制振パッド:劣化・割れ・ズレ。共振が出ている機器は金物側の見直しも検討。
2) 排水・浸水対策(ドレンが肝)
- ドレン勾配・詰まり:トラップのゴミ・スライムを清掃。逆止弁で“ポコポコ音”や逆流を抑制。
- 高置架台:冠水の恐れがある低地・通路脇・屋根ドレン近傍は高脚置台を検討。
- 周辺排水路:土砂・落ち葉の除去。側溝の溢れを想定し、避難導線の確保も。
3) 周辺の飛来物・遮風
- パレット、看板、波板、植木鉢など軽量物を退避。
- 室外機の上に重し(ブロック等)を置く養生はNG:変形・共振・吸排気阻害・落下の危険。
4) 停電・復電の手順書を用意
- 停電時は機器を停止し、長時間無人化時は分電盤ブレーカーをOFF。
- 復電時は通電火災・漏電の恐れ。通電前点検→段階的試運転の順で復帰。
- BEMS/スケジューラは自動復帰設定を事前確認。
写真記録のすすめ:台風前の“平常時”写真(機器前後・端子箱・配管支持)を残すと、通過後の差分が一目で判別できます。
接近中(24〜0時間)の安全運用ルール
原則:人命最優先、強風域では無理な運転をしない。
- 運転中カバー禁止:吸排気が塞がれ過熱・故障の原因。養生は停止後のみ。
- 屋上立入は極力回避:やむを得ない場合は2名以上、墜落・飛散対策(ハーネス・ヘルメット・手袋)。
- 重要設備の例外運用:サーバ室・医療室など止めにくい負荷は、可搬機・予備機の応急ルートと、停止条件(風速・振動・電流値閾値)を事前規定。
通過後(0〜48時間)の復旧フロー
鉄則:通電前点検→段階的試運転。
- 浸水痕・泥はね・基礎沈下の有無 → 浸水の可能性が少しでもあれば通電しないで点検依頼。
- 転倒・位置ずれ・配管ひねり → 自力で起こさない。冷媒漏れ・感電の危険。
- 端子箱・配線 → 水濡れ痕・結露・被覆擦れ。漏電ブレーカーが落ちる場合は無理に上げない。
- ファン/熱交換器 → 異音・割れ・異物混入の有無。
- ドレン排水 → 排水経路の詰まり・逆流音の確認。
- 段階的試運転(短時間→定格へ):電流・圧力・吹出温度・振動・排水を確認。異常があれば即停止→点検。
恒久対策:設計・施工で台風に強い設備へ
場当たりの養生には限界。計画的アップデートがコスパ最強。
- 設置位置の最適化:屋上の縁・角・立上り付近は風圧増大。可能なら中央寄り、または防風ルーバーを併用(吸排気確保を設計条件に)。
- アンカーと金物の選定:基礎強度・下地厚・引抜き耐力を計算で担保。振れ止めワイヤや連結フレームも有効。
- 高置架台+ドレン計画:内水氾濫・側溝溢水に備え、高脚化+排水経路確保で“水に負けない配置”へ。
- 雷・サージ対策:SPD(避雷器)・接地の点検。復電サージで制御基板が損傷する事例対策。
- 保全性の設計:常設の点検通路/安全帯掛け/落下防止チェーンで“安全に点検できる屋上”に。
- 運用設計(ルール化):停止条件、点検責任者、連絡フロー、写真記録様式を手順書化し、年1回は訓練。
よくある質問(FAQ)
Q. 室外機の上にブロックなど重しを置いても良い?
A. 非推奨です。共振・変形・落下・吸排気阻害の原因。正規の固定金具とアンカーで対応しましょう。
Q. カバーで養生して運転しても良い?
A. 運転中はNGです。停止後の簡易養生は可ですが、吸排気を塞がないよう注意してください。
Q. “ポコポコ音”がする。故障?
A. 多くは風圧によるドレン逆流が原因。逆止弁+経路清掃で改善するケースが一般的です。
Q. 復電したらすぐ運転再開して良い?
A. 通電前点検が先です。浸水・破損・漏電が疑われる場合、無理にブレーカーを上げないでください。
まとめ/チェックリスト(抜粋)
キモは「固定・排水・通電管理」。
- 台風前:アンカー/金物/防振/ドレン/飛来物/手順書
- 接近中:運転中カバー禁止/屋上立入最小化/重要設備の例外運用
- 通過後:通電前点検→段階的試運転/漏電・浸水時はプロ点検へ