業務用エアコン選定ガイド
はじめに
業務用エアコンは、オフィスや店舗など、広範囲の空調に欠かせない設備です。快適な空間を提供するだけでなく、従業員の生産性向上や顧客満足度向上にも貢献します。しかし、業務用エアコンは種類や機能が豊富で、最適な機種を選ぶのは容易ではありません。
本資料では、業務用エアコン選定の参考資料として、エアコンの種類、メーカーの特徴、選定基準、最新の技術動向などを詳しく解説します。
業務用エアコンの種類と特徴
業務用エアコンは、設置場所や用途に合わせて様々な種類があります。主な種類と特徴は以下の通りです。
天井埋め込み型
- 天井埋込カセット形:天井に埋め込むタイプで、4方向、2方向、1方向など、吹出口の数が異なります。オフィスや店舗で広く採用されています。
- ラウンドフロー:360度全周吹出しで、部屋全体に風を届けることができます。
- ダブルフロー:2方向の吹出し口で、照明の並びに調和して設置できます。
- シングルフロー:一方向から風を吹き出すタイプです。
- コンパクトタイプ:設置スペースに制限がある場合に適しています。 寸法はメーカーにより異なりますが、700mm~760mmの大きさです。
- 天井埋込ビルトインタイプ:吹出口を本体から分離して設置できるため、レイアウトの自由度が高いです。ダクトを使って、吹出口の設置場所を自由に設定できます。
- 天井埋込ダクト形:室内機本体を天井裏に設置し、ダクトを通して空調するため、見た目がすっきりとしています。インテリアデザインを重視する場合に適しています。スリットと呼ばれる部材を吹出口に設置すれば、本体を完全に隠すことも可能です。
壁掛け型
- 壁に取り付けるタイプで、設置が簡単です。家庭用エアコンと同様に、比較的安価に導入できます。天井裏のスペースが限られている場合や、既存の建物に後付けで設置する際にも便利です。設置工事も容易で、メンテナンス性にも優れています。
床置き型
- 床に設置するタイプで、天井設置が難しい場合に適しています。工場や図書館、食堂だけでなく、病院、学校、事務所など、さまざまな場所に採用されています。
- 直吹形:本体上部から直接送風します。
- ダクト形:本体からダクトで分岐し送風します。
- 床置き型エアコンには冷媒センサーが搭載されており、5年ごとに交換が必要です。
- 床置可動型スポットエアコン:キャスター付きで移動可能なスポットエアコンもあります。冷房機能のみで、局所的に冷風を送りたい場合に適しています。
天井吊形
- 天井から吊り下げて設置するタイプです。天井に穴を開ける必要がなく、天井カセット形よりも設置が容易です。吹き出し口が広く、遠くまで風を届けることができます。学校やオフィス、レストランなどで採用されています。
- 柱や仕切りの多い場所には不向きです。
各メーカーの特徴
ここでは、ダイキン、三菱電機、パナソニック、日立の4社の業務用エアコンの特徴を比較します。
ダイキン
省エネ性能
ダイキンは、業界トップクラスの省エネ性能を誇ります。新冷媒R32、高効率インバーター、AI制御などの最新技術を採用し、最大70%の省エネを実現しています。 特に、フラッグシップモデルである「FIVE STAR ZEAS」シリーズは、業界トップクラスのAPFを備えています。
- スマート学習節電: AIが1日の予想ピーク消費電力を割り出して制御することで、約15%の省エネが可能です。
- デマンド制御: 消費電力で調節することで節電します。
- アクティブ・サーキュレーション気流: 気流を水平に勢いよく吹出すことで、部屋全体に風を循環させます。
- 新静音化技術: 富士フイルムと共同開発した通風防音材により、換気量を確保しながら運転音を20%以上低減します。
静音性
ダイキンは、夜間静音機能や低騒音ファンなどの技術を採用し、静音性にも優れています。3段階の静音モードから選択可能です。
価格
高性能なため、他社製品より高額な傾向にあります。しかし、省エネ効果が高いため、ランニングコストを抑えることができます。
メンテナンス性
フィルター自動清浄機能や空気清浄機能を搭載した機種もあり、メンテナンスの手間を軽減できます。
耐久性
厳しい環境試験をクリアした機種をラインナップしており、長期使用を想定した設計となっています。
デザイン
シンプルで洗練されたデザインが特徴です。23 グッドデザイン賞を受賞した機種もあります。
スマート機能
スマホアプリによる遠隔操作、AIによる自動制御、センサーによる検知機能など、スマート機能も充実しています。
保証期間
本体1年、冷媒系統5年です。10年延長保証サービスもあります。
三菱電機
省エネ性能
三菱電機も、業界トップクラスの省エネ性能を誇ります。人感ムーブアイ、SiCパワー半導体などの独自技術を採用しています。
- 人感ムーブアイ mirA.I.: 室温・輻射温度・外気温などを検知して、少し未来の室温変化を予測して運転を調整します。
- SiCパワー半導体: 電力損失を約35%低減し、エアコンの効率化に貢献しています。
- BCP支援モード: 非常用電源での運転が可能です。
静音性
高性能直流モーター、新設計大口径ファンを採用し、静音性を実現しています。
価格
標準的な価格帯です。
メンテナンス性
フィルター自動清掃ユニット、遠隔監視サービスなどにより、メンテナンスをサポートしています。5年間ノーメンテナンスのフィルター自動清掃ユニットも用意されています。
耐久性
国内生産で耐久性に優れています。
デザイン
シンプルなデザインで、空間に調和しやすいのが特徴です。
スマート機能
スマホアプリによる遠隔操作、CO2濃度検知、換気連携など、スマート機能も充実しています。
保証期間
メーカー保証1年です。延長保証サービスもあります。
パナソニック
省エネ性能
パナソニックも、業界トップクラスの省エネ性能を誇ります。エコナビ、高効率インバーターなどの技術を採用しています。
- エコナビ: 人感・湿度・床温センサーを活用し、人の動きや床温度など室内のさまざまな情報を検知して、環境に合わせて快適かつ省エネな冷暖房運転を実現します。人が不在時の省エネ効果は冷房運転の場合最大41%、暖房運転時は最大21%です。
静音性
夜間静音モード、低騒音ファンなどの技術を採用し、静音性を実現しています。 食品加工場やホテルなどの調理施設に適した「Mシリーズ」では、深夜の時間帯に夜間静音モードが作動します。
価格
幅広い価格帯の機種をラインナップしています。
メンテナンス性
フィルター自動清掃機能、ナノイーXによる空気清浄機能など、メンテナンス性に優れた機能を搭載しています。
耐久性
パナソニックの業務用エアコンは、厳しい環境試験をクリアしています。44 震度7クラスの地震を再現した耐震試験や、風速60m/秒の風あて試験にも耐え、破損や転倒などを起こしませんでした。
デザイン
スタイリッシュなデザインが特徴です。
スマート機能
スマホアプリによる遠隔操作、クラウドサービスなど、スマート機能も充実しています。
保証期間
メーカー保証1年です。延長保証サービスもあります。
日立
省エネ性能
日立も、業界トップクラスの省エネ性能を誇ります。高効率インバーター、凍結洗浄などの技術を採用しています。
- 凍結洗浄: 熱交換器を凍らせて霜を付け、その霜を溶かして汚れを落とすことで、熱交換器の目詰まりを抑え、風量低下を抑制します。暖房運転シーズンにも使用可能です。
- スムースドライブ制御: 圧縮機のON・OFF動作回数を抑えつつ、スムーズに運転することで更なる省エネ化を図ります。
静音性
ナイトシフトモード、運転音低減モードなどにより、静音性を実現しています。
価格
平均的な価格帯です。
メンテナンス性
凍結洗浄、フィルター自動清掃ユニットなどにより、メンテナンス性を向上させています。
耐久性
長期使用を想定した設計となっています。
デザイン
シンプルで洗練されたデザインが特徴です。グッドデザイン賞を受賞した機種もあります。
スマート機能
スマホアプリによる遠隔操作、センサーによる検知機能など、スマート機能も充実しています。
保証期間
メーカー保証1年です。延長保証サービスもあります。
業務用エアコンの選定基準
業務用エアコンを選ぶ際には、以下の項目を考慮する必要があります。
- 設置場所の広さ: 広さに応じた能力(馬力)のエアコンを選ぶ必要があります。エアコンの馬力は、床面積だけでなく、建物の構造・形状・窓の位置、人員・熱源量などによっても左右されます。
- 使用目的: 冷房のみ、暖房のみ、冷暖房など、使用目的に合った機能を搭載したエアコンを選びましょう。
- 予算: 初期費用だけでなく、ランニングコストも考慮して予算を設定しましょう。
- 省エネ性: 省エネ性能が高いエアコンを選ぶことで、電気代の節約になります。長期的に見ると、初期費用が高くても省エネ性能の高いエアコンを選んだ方が、コストパフォーマンスに優れる場合があります。
- 静音性: 静音性が低いと、周囲に迷惑をかける可能性があります。特に、病院や図書館など静かな環境が求められる場所では、静音性が重要な選定基準となります。
- デザイン: 設置場所の雰囲気に合ったデザインのエアコンを選びましょう。エアコンのデザインは、空間の印象を大きく左右する要素の一つです。
- メンテナンス性: メンテナンスのしやすいエアコンを選ぶことで、手間や費用を削減できます。
- 設置工事の容易さ: 設置工事の容易さも考慮することで、工期や費用を抑えられます。
- アフターサービス: アフターサービスの充実度も重要な選定基準です。万が一、故障が発生した場合でも、迅速な対応を受けられる体制が整っているか確認しましょう。
最新の技術動向
- 省エネ技術: インバーター技術、ヒートポンプ技術の進化により、省エネ性能が向上しています。インバーター技術は、エアコンの圧縮機の回転数を制御することで、消費電力を抑える技術です。ヒートポンプ技術は、空気中の熱を利用して冷暖房を行う技術で、エネルギー効率に優れています。
- AI制御: AIによる空調制御により、快適性と省エネ性を両立させる技術が登場しています。人の行動パターンや天候などを学習し、最適な空調を行います。
- 例えば、NTTの「AI空調制御クラウド」は、AIの深層強化学習を活用し、快適性と省エネを高い水準で実現します。既設センサーや監視カメラ画像を活用することで、AI学習に必要な温湿度や人流などのインプットデータを収集し、スムーズな導入が可能です。
補助金制度
業務用エアコンの導入や更新には、国や地方自治体から補助金が出る場合があります。省エネ効果の高い機種や、環境負荷の少ない機種が対象となることが多いです。
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金: 省エネ設備・機器の更新など、企業が省エネのために必要な措置を講じる場合、費用の一部または全額が支給されます。
- 脱炭素ビルリノベ事業: ビル全体の省エネ改修工事を対象とした補助金です。
購入時の注意点
- 設置スペース: 室内機と室外機を設置するスペースを確保できるか確認しましょう。室外機の前には、十分なスペースを確保する必要があります。また、天井埋め込み型を設置する場合は、天井裏のスペースも確認しましょう。天井の高さが変わることで、圧迫感を感じてしまう可能性もあります。
- 能力: 設置場所の広さや用途に合った能力(馬力)のエアコンを選びましょう。馬力が大きすぎるとオーバースペックになり、価格が高くなってしまいます。
- 価格: 価格だけでなく、ランニングコストやメンテナンスコストも考慮しましょう。
- アフターサービス: 保証期間やメンテナンス体制などを確認しましょう。
- 設置工事: 設置工事は専門業者に依頼しましょう。
- 電源: 業務用エアコンは、一般的に三相200Vの電源を使用します。家庭用とは異なり、動力プラン(低圧電力)の契約が必要です。ただし、単相200Vの電源に対応した機種もあります。
まとめ
業務用エアコンは、快適な空間を提供するために欠かせない設備です。しかし、種類や機能が豊富で、最適な機種を選ぶのは容易ではありません。
本資料では、業務用エアコンの選定に必要な情報をまとめました。設置場所の広さや用途、予算などを考慮し、最適な業務用エアコンを選定してください。
特に、省エネ性能は重要な選定基準です。省エネ性能の高いエアコンを選ぶことで、電気代の節約になり、長期的に見ると大きなコスト削減効果が期待できます。 また、設置場所の雰囲気に合ったデザインのエアコンを選ぶことも重要です。
各メーカーは、それぞれ独自の技術や機能を開発し、省エネ性、静音性、快適性を追求しています。本資料で紹介した各メーカーの特徴を参考に、自社のニーズに合ったメーカーを選びましょう。
業務用エアコンの導入は、専門業者に相談することをおすすめします。専門業者は、設置場所の状況やお客様の要望をヒアリングし、最適な機種を提案してくれます。もちろん、中部空調サービスでもお客様のニーズに合わせ、最適な提案をできるよう対応しております。