【通電厳禁】室外機転倒時のNG行動と安全確保ガイド
結論:室外機が転倒した場合は、通電せず・自力で起こさず・現状を記録が鉄則です。冷媒配管の折れ・抜けによる冷媒漏えい、端子箱のショート、フレーム歪みによる二次破損の恐れがあります。本記事では、工場・事務所・店舗などの業務用エアコンを対象に、初動→復旧→再発防止の実務手順をチェックリストでまとめます。
目次
- 1. 転倒時のNG行動(絶対にやらない)
- 2. 初動対応:安全確保と記録
- 3. 復旧の判断フロー(通電前チェック)
- 4. よくある故障・リスクと兆候
- 5. 転倒の主原因と対策の考え方
- 6. 再発防止の恒久対策(設計・施工・運用)
- 7. まとめ/チェックリスト(抜粋)
1. 転倒時のNG行動(絶対にやらない)
- 自己判断で起こさない・移動しない(配管折損・冷媒漏えい拡大・感電の恐れ)。
- 通電・試運転をしない(端子箱やモーターのショート、通電火災リスク)。
- 漏えい疑いの配管を触らない・切断しない(有資格者の作業領域)。
- フレームを叩いて矯正しない(溶接部・筐体の亀裂を助長)。
2. 初動対応:安全確保と記録
目的:二次災害の防止と、迅速・正確な復旧につなげる。
- 人命優先:周囲を立入禁止に。屋上では墜落・飛散物にも注意。
- 電源遮断:関連ブレーカーをOFF。ラベルに日時・担当を記入。
- 漏えいの確認:油じみ、白煙・シュー音、霜付きなど冷媒漏えいの兆候がないか離れて目視。
- 状況記録:スマホで全景/基礎・架台/配管接続部/端子箱/周辺の飛来物を撮影。保険・原因分析に有用。
- 専門業者へ連絡:型式・台数・転倒経緯(台風・地震・接触)・写真を共有。
3. 復旧の判断フロー(通電前チェック)
下記は一般的な点検項目です。条件により順番・項目は変わります。
- 目視・寸法確認:フレーム・架台の歪み、筐体のへこみ、基礎の割れ・沈下、アンカー抜け。
- 配管系:フレア部の折れ・割れ、ろう付け部の割れ、銅管の座屈・平打ち痕。オイル痕=漏えい疑い。
- 電装系:端子箱の浸水・泥・割れ、導通・絶縁抵抗。端子の焼損・緩み。
- 回転体:ファン羽根の割れ・芯ブレ、モーター軸の曲がり、ベアリング音。
- 熱交換器:フィンのつぶれ・コイルの変形、接触部の擦れ。
- 圧力/気密:漏えい検査(窒素封入・減圧など)→問題なければ真空引き→所定量充填。
- 段階的試運転:短時間・低負荷から開始。電流値・運転音・振動・吐出/吸入温度・圧力・排水を確認。
注意:冷媒回路の開放・充填は有資格者の作業です。現場判断での再充填は行わないでください。
4. よくある故障・リスクと兆候
- 冷媒漏えい:フレア割れ・配管折損。兆候=油じみ、霜付き、性能低下。
- 通電火災・ショート:端子箱の変形・水濡れ・配線擦れ。兆候=焦げ臭、ブレーカー遮断。
- ファン・モーター損傷:軸曲がり・ベアリング破損。兆候=異音(ゴー/ガラガラ)、振動増大。
- フレーム歪み:コイルやファンと干渉。兆候=回転時の擦れ音、ケース接触痕。
- 基礎・アンカー不良:再設置しても転倒再発。兆候=アンカーの浮き、基礎のひび・欠け。
5. 転倒の主原因と対策の考え方
転倒原因は大きく風・地震・衝突・腐食・設計不良に分類できます。
- 強風・台風:屋上の縁・角・立上り付近は風圧増大。
→ 設置位置の見直し+防風ルーバー(吸排気を阻害しない設計)。 - 地震:引抜き・せん断力に対するアンカー不足。
→ 耐震金物・ワイヤブレース・連結フレームで揺れを分散。 - 車両・荷の接触:工場通路脇の直置き。
→ 防護バリカー・位置変更・高置架台。 - 腐食劣化:屋外塩害・水たまりで架台/アンカーが朽ちる。
→ 防錆塗装・SUS化・止水・排水改善。 - 設計・施工不良:基礎厚不足、アンカー長不足、座金欠品。
→ 計算に基づく選定と施工記録の整備。
6. 再発防止の恒久対策(設計・施工・運用)
場当たり対応では限界。設備・建築・運用を一体で見直します。
- 固定設計の更新:風荷重・地震力の検討。アンカー径・本数・埋め込み深さを計算で決定。
- 架台/基礎:連結フレーム・ベースプレート厚の見直し。高置架台化で冠水も同時対策。
- 振れ止め・ブレース:引抜きと転倒モーメントを低減。周囲障害物とのクリアランスも確保。
- 設置位置最適化:屋上中央寄り・風の回り込みが少ない位置へ。吸排気ショートサーキットに注意。
- 電気保護:端子箱の防水・ケーブルグランドの更新、漏電遮断器・SPD(サージ)導入。
- 運用ルール:台風・暴風警報時の停止~ブレーカーOFF、屋上立入基準、点検記録様式を手順書化。
7. まとめ/チェックリスト(抜粋)
ポイントは「起こさない・通電しない・原因を潰す」。
- 周囲安全→ブレーカーOFF→状況写真。
- 配管・電装・フレーム・基礎・アンカーを順に点検。
- 冷媒系は漏えい検査→真空→規定量充填→段階的試運転。
- 恒久対策:固定計算・ブレース・基礎補強・位置変更・防錆・運用手順。
チェック欄(コピー用):
□ 立入禁止/安全確保 □ ブレーカーOFF □ 写真記録 □ 漏えい兆候確認 □ 専門業者連絡 □ 点検記録・是正 □ 再発防止計画