「暑くていいですね」の意味
「暑くなってきましたね。これから繁忙期じゃないですか?暑くて“いいですね”!」
そんなふうに声をかけられることが、この時期になると増えてきます。
たしかに私たちの業界では、夏になると依頼が増え、繁忙期に入ります。ありがたいことです。
ただ、そう言われるたびに、私は心の中でちょっと複雑な気持ちになります。
「暑くなる=儲かる=いいこと」
たしかに、ビジネスとして見れば正解です。
でも、それが「本当にいいことか?」と聞かれれば、私は首をかしげます。
忙しい=心を失う?
“忙しい”という言葉は、「心を亡くす」と書きます。
まさにこの時期の現場では、その言葉がリアルに感じられることが多くなります。
暑さは、ただの不快感では済まされません。
連日35度を超えるような気温の中での作業。
炎天下の現場、風が通らない倉庫、冷房の効かない搬入作業……
水分を取っていても、気づかぬうちに体力は削られ、集中力は落ちていきます。
油断すれば、熱中症や事故にもつながりかねません。 その中で黙々と、淡々と、自分の持ち場を守ってくれている社員たち。
「暑くていいですね」と言われるたびに、私はその姿を思い出します。
儲かることより、大切にしたいこと
もちろん、会社として利益を出すことは大切です。
社員の生活、会社の継続、お客様への責任——
すべては健全な経営があってこそ成り立ちます。
でも、私が一番大切にしたいのは、働いてくれている「人」です。
誰かの体調や命を犠牲にしてまで、利益を追いかけるような会社であってはならないと強く思っています。
「暑くなると忙しくなるから大変だよね」
そう言ってくれる人がいたら、私はこう返すようにしています。
「そうなんです。社員が体を張ってくれているからこそ、回っているんですよ。ありがたいことです。」
感謝と、見えない努力
朝早く、誰よりも先に現場の道具を準備してくれている社員がいます。
作業が終わったあと、自分の分だけでなく全員分の飲み水を補充してくれる社員もいます。
あるいは、現場の帰り道に新人の体調を気づかって何気なく声をかけている先輩もいます。
どれも外からは見えにくいけれど、そういった一つひとつの積み重ねが、うちの会社の力になっています。
社長である私は、彼らが今日も無事に帰ってきてくれることを願っています。
誰一人欠けてほしくない。心からそう思います。
「暑くていいですね」に込められた、本当の意味
暑くなると「暑くていいですね」と言われること。
きっと、それは「忙しくて儲かる=良いことですね」という善意から出た言葉だと思います。
でも、私はその言葉に対して、こう返したい。
「はい。でも、イイのは“社員が今日も無事に現場から帰ってきてくれること”なんです。」
それが、私にとって一番“イイこと”なのです。
社員の皆さん、いつも頑張ってくれて、本当にありがとう。
暑さはこれからが本番ですが、くれぐれも無理をせず、自分の体と命を最優先に考えてください。
あなたが元気でいてくれることが、会社にとって最大の財産なのです。